年に一度の養子縁組カンファレンス 2019①【子どもの問題行動?】
先日、アメリカ・ニューヨークのブルックリンで開催された、年に一度のAPC(Adoptive Parents Committee)のカンファレンスにいってきました!APCは1955年に設立された、北米で最も古い、養子縁組を経験した親たちによる団体です。毎月の集会に加えて、毎年11月には大きなカンファレンスが開かれます。
様々なテーマに沿った講義
朝から夜までぎっしり、1時間ごとに自分の興味のあるテーマについての講演が聞けます!これから養子縁組を考えている親、すでに養子縁組を終えた親、色んなバックグラウンドの人たちが集まります。
アメリカの養子縁組制度
アメリカでは養子縁組、里親制度が日本よりもかなり進んでいます。一説には、日本で里親のもとで暮らす子供が約18%なのに対し、アメリカでは約77%と言われています。現在、日本国内に約4万5000人はいると言われている社会的保護が必要な子どもたち。子ども第一と考えたときに、まだまだ親の権利が強い日本ですが、何がベストなのかを模索していけたら、アメリカの良いところを日本に紹介できたら、という思いでこちらで勉強を始めました。
カンファレンス内容
さてさて、このカンファレンスですが、テーマは多岐に渡ります。国内での新生児養子縁組、里親制度を利用したもの、そして国際養子縁組。また、さらに細かく、LGBTQ+の子どもたちを迎えた場合、産みの親で子どもを養子に出した方の講演、子どもを迎えた後の様々な問題など本当にたくさんのテーマの中から講義を選びます。全て聞けたら良いのに、、、!!
講義1:問題行動を起こす子どもたち
今回私が一番興味深かった講義が、エレイン医師による”Is it just ADHD? Understanding your adopted child's behavior"(それは単にADHD?養子縁組後の子どもの行動について)というものです。専門家にとっても、子どもたちの行動からADHDやPTSDなどの診断を下すことはとても難しいことだそうです。特に養子縁組を経験した子どもたちは、月齢に関わらず、その行動の裏に様々な原因が考えられるのです。
Caring for Your Adopted Child: An Essential Guide for Parents (English Edition)
- 作者:MD, MPH, FAAP, Elaine E. Schulte,Robin Michaelson
- 出版社/メーカー: American Academy of Pediatrics
- 発売日: 2018/09/25
- メディア: Kindle版
子どもの問題行動には必ず理由がある
エレイン医師によると、子どもたちの問題と思える行動にはいつも理由があります。
幼少期に育むべき「愛着」関係において、通常は生きる上で必要なこと(お腹が空く、痛み、見て欲しいという欲求)が子どもから発せられ、それを表現した時に大人が反応し、そして子どもが満足する、これを繰り返して行くことになります。欲求が何らかの形で叶えられなかった場合に、大人にとって「問題」と思われる行動が起きていきます。
また、極端な話、子どもたちが自分の感情や行動をコントロールできなくなった時に、唯一コントロールできるのが食事や排出です。ここに何か通常とは違うサインが現れることもあります。そして、問題行動を見せている子どもたちは、その行動によって、大人たちに何かが違う、おかしいと教えてくれているのです。
さらに、一見「問題」に見えないような行為(例えば幼児が全く人見知りせず初対面の人にも躊躇なく近くなど)でも、本当は何かしらが隠れていることがあります。(この場合だと、多くの幼児は親から離れるのに躊躇し、新しい環境に慣れるのに少し時間を要するはず)
専門家でも難しい正確な診断
先にも述べたとおり、もう診断名をつけようと思えば本当にたくさんの名前があるんですね。ADD、ADHD、自閉症、PTSDなどなど細かく分けたら本当にたくさんあるようです。もともと遺伝子的なものなのか、後から何かしら子どもに起きたことが原因なのか。家での行動、学校や幼稚園での行動はどうか。これらを全て総合的に見て、何がその子にとって必要なのかを見るのがドクターたちの仕事だそうです。やはり専門家の意見を仰ぐことは、その子の成長にとってとても大切です。
試し行動は誰しもが通る道
養子縁組を受けた子どもが、特にすでに物心がついている場合、「試し行動」と呼ばれる大人たちにとっては「問題行動」に見える行動を起こすことはよくあります。そうやって、養親となった大人たちがどこまで自分を受け入れてくれるのかを試しているんです。なんどもなんどもお皿をひっくり返したり、癇癪を起こしたり。何があってもいなくならないこと、変わらず愛してくれることを確かめようとしているんです。
子どもの発達において、特に幼少期に、常に自分を受け止めてくれる誰かがいることは、愛着を育む上でとても大切なことです。だからこそ、少しでも多くの子どもたちが「家庭環境」の中で育つことが大事なのです。
10数年ですがたくさんの子どもたち、ご家庭を見てきて、本当に家庭環境が大切だなと私は思っています。そして、私が勉強しているこの間にも、子どもたちは大きくなってしまうし、大切な子ども時代が家庭環境を知らないまま過ぎて行くかもしれないことは、心苦しく感じる時もあります。(もちろん、家庭環境以外の場所で育ったからどうという話では決してありません!!!)
今少しでもできることをしていきたいです。カンファレンスの様子レポは次回以降にも続きます^^