養子縁組カンファレンス2019②【産みのお母さんから見た養子縁組】
前回に引き続き、養子縁組カンファレンスのレポートです!
産みのお母さんから見た養子縁組
次に私がご紹介したいのは、"Beyond Juno(ジュノの向こう側)" というテーマで講演された、実際に子どもを養子縁組に出されたお母さんです。
Junoという映画は2007年にエレン・ペイジ主演で公開された、予期せぬ妊娠をしたティーンの女の子と、それにまつわるお話です。(主演のエレンは現在も女優として活躍中で、ゲイであることを公表し奥さんとの仲睦まじい様子をSNSでもシェアしています。)
10代で妊娠したお母さん
今回の講演をされたクラウディアさんも、10代で予期せぬ妊娠をし、子どもの父親となる男性にはそれを告げぬまま子どもを養子縁組に出しました。彼女は、昨年もカンファレンスに参加しており、その時は"This Is Us"というアメリカで大人気となったドラマをテーマにパネルディスカッションをされていました。(This Is Usでは、三つ子のうち一人が死産だったカップルが、偶然同じ日に消防署の前に置いていかれた子どもと同じ病院で出会い、その子をそのまま自分の子どもとして迎え入れる、というのがストーリーの大筋です。迎え入れた両親は白人、迎え入れられた子どもは黒人というアメリカらしい設定でした。ゴールデングローブ賞など数々の賞を受賞、ノミネートされ、日本ではNHKで放送されました。実際はそんなに簡単に縁組はできないけどね、というのがパネルディスカッションでの話でしたが)
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クラウディアさんは、10代で右も左も分からないまま養子縁組という選択をした時、これを知りたかった、こういう事実を大人たちに教えて欲しかった、また今はどういう関係をお子さんと築いているのか、など色々なお話をしてくださいました。以下にまとめたのでぜひ読んでみてください!
子どもを養子に出した母親として思うこと
世界には誰一人として、自分の子どもを手放したいという親はいないこと。
これまでの自分の人生を愛しているし大切だと思っているけど、もしもう一度やり直せるなら、養子縁組の斡旋団体には電話しないと思う。
教えられることと、実際起きていることに違いがあるかもしれない。
例えば、子どもを養子に出した親の約95%が鬱状態を経験すること。養子に出された子どもたちが、それ以外の子ども達より4倍近い自殺率を持つこと。”養子に出すことが子どもの為にベストだ”としか言われなかった。子どもを養子に出すことによって起こりうることをなるべく沢山知っておきたかった。今の養子縁組の現場を見ると、子どもでなく、マーケティングが第一なんじゃない?と思ってしまうこともあるそう。
産みの親も、産んだ子どもとの繋がりが断たれるのが怖いことがある。
アメリカでは80年代以降オープンアダプションが主流です。人種や国をまたいで縁組する人が多いのはこの流れの為ですね。ただ、どれほどオープンにするかは養親との相談で選べます。大抵の養親はミニマムコンタクトを選ぶようです。会場にいた3組の縁組済み家庭のうち、3組ともミニマムでした。州の法律によっても異なります。
※最初は頑なな養親の態度も、時が経つにつれて徐々に変わっていき、血縁家族と養親家族で良い家族関係を持てることも多いようです。
また、実際にあった話として、第一子を養子に出した母親が子どもに面会に行った際、第二子を妊娠していました。それを知った養親に、「あなたにはもう次の子がいるから、”私たちの”ベイビーにもう用はないでしょう」とものの数分で家から追い出され、ショックを受けた母親がいたそうです。
クラウディアさんは、ミニマムコンタクトの中でただ毎日養親からの手紙を待つことしかできず、ドキドキしながら郵便配達を待つ日々が続いたそうです。子どもが18才になれば養親に自分から連絡を取って、子どもが産みの親に会いたいかどうかを決められる為です。その当時はインターネットも普及していなかった為、手紙で送られてくる写真が唯一の楽しみだったと言っていました。ただgoogleが出てきた後は、やっぱり探しちゃった!と言っていましたが
産みの親と連絡を取ることを、どうか怖がらずいてほしい。
産みの親は、悲しみや、怒りや、沢山の感情を抱えている。でも、それは特に養親に向けられたものではない。だから、いざ産みの親に連絡をした時の反応を怖がらずに、連絡することをためらわないでほしい。
ここまで包み隠さず沢山話してくださったクラウディアさんには敬服です。沢山の養親や養子縁組エージェントが聞いている中で、何でも聞いてくださいとオープンにお話されていました。
エージェントとしてこれから子どもを産む母親にできることとは
エージェントに勤めている方が、「逆に、何を母親たちに伝えてほしいですか?」と質問された場面もありました。エージェントでは、養子縁組すべきと母親を無理に促すこともないし、もうそれこそ何百回とは言わず「本当に本当に養子に出していいの?」と確認するそうです。それに対して、クラウディアさんは、それが大人達にとっての起きてほしいことなのか、子どもに取ってベストなことなのか、見極めるために、なるべく多くの情報、起きる可能性のある良いことも悪いことも全て伝えてほしい、と答えていました。
現在の実子との関係
現在クラウディアさんは、養子に出されたお子さんと、その後に生まれたお子さん達と素敵な関係を築いていらっしゃるそうです。養子に出された最初のお子さんは頻繁にクラウディアさんの所に遊びに来たり、今年のサンクスギビングにも集まるのよ、と言っておられました。アメリカでは、サンクスギビングは近しい家族や友人と過ごす大切なホリデーの一つなので、これは本当に良い関係が築けていることの現れだと思います。最初の3、4年はやはりぎこちないこともありましたが、今ではどの子どもの誕生も起きるべくして起きた、と思えるそうです。
ちなみに、養子に出された第一子の父親となる男性には、19年経ってようやく伝えたと笑い話としてされていました。
久しぶりね、元気だった?ところで、はい、(写真を出す)このあなたにそっくりな青年はあなたの息子よ!という感じだったみたいです。当時、エージェントには、法律的にも倫理的にも父親に子どもの存在を知らせるべきと言われましたが、結局なぜか伝わらないまま、クラウディアさんも勇気が出ず、19年も待つことになったとか。
次回は、子どもを迎え入れた側の養親の方の講演も聞いたので、そちらを記事にします^^皆さま良い1日を!