アメリカの子育て/養子縁組情報

アメリカで養子縁組について勉強中。学んだことをシェアしていきます。また、日米合わせて10年以上教育業界に関わってきた経験を元に、海外での子育て事情や子育て番組の情報をシェアしていきます。

秋学期の学校再開を強行するトランプ政権

f:id:alwayschooselove:20200708122947j:plain

アメリカの半分以上の州で、さらなる新型コロナウイルスの感染率上昇がニュースとなる中、アメリカ政府は秋学期からの学校再開を強行する姿勢を見せています。

 

*参考記事(全て英語)

www.voanews.com

 

特に幼い子どもたちへの新型ウイルスの影響が不確定な中、また、多くの場合に感染力のある病気を家庭へ持ち込んでしまうのが幼い子ども達という側面もある中、政府は秋学期からの学校プラグラムを物理的に再開するよう、各州知事にプレッシャーをかけています。

オンライン授業により子供たちの間では深刻な学力格差が生まれているとの批判もあります。また、子供たちを学校という社会的活動から切り離すことは、深刻な精神的影響をもたらすという声もあります。しかし、不明確なことが多いパンデミックの中、子供たちを学校に戻すことが本当に得策なのでしょうか。

ニューヨーク州の反応

私がいるニューヨーク州では、まだ秋学期からの学校再開は決定されていません。

7月6日からようやくフェーズ3に移行したニューヨーク市も含め、クオモ知事は、全ての裁量権は自分にあるとして、再開を名言はせず、慎重になるべきだとしています。

一方で、学校再開に向けて、米国保健局の指針に従って準備は進めるよう指示を出しています。

7月6日時点でのニューヨーク州コロナウイルス陽性率は0.95%、一時598名まで増加した一日の死者は9名となっています。

フェーズ3では飲食店の店内営業も許可されていましたが、他州での感染再増加を受けて、現時点では許可に至っていません。

現時点で、感染の再増加傾向にある州からの移動者へ14日間の自主隔離を規定しているニューヨーク州。違反者には、初回で罰金2000ドルが定められています。アメリカ全土も、ニューヨーク州も、依然としてパンデミックの最中にいます。

苦境に立たされる留学生たち

多くの州や学校機関から反対の声が上がる中、さらに苦しい対応を迫られているのが各公立、私立大学です。

7月6日、米移民・関税執行局(ICE)は米国の高校、大学への留学生に対し以下の新たな措置を発表しました。

※以下の情報は、個人的に調べたものです。法的なアドバイス等は必ず専門家の方へご相談ください。

新しい学生ビザへの規定

・対象ビザは一般学生向け「F1」と職業訓練プログラム学生向けの「M1」

・留学先の大学などが秋学期の授業を全てオンラインプログラムにて行う場合、ビザは発給せず入国も認めない

・オンラインと対面式を組み合わせて行う予定の学校は、全てオンラインではないことなどを学校側がi20(在学証明書)上でそれを証明しなければならない

・すでに米国に滞在している留学生に対しては、対面式授業を実施する学校に転校するか、米国を出国しなければならない

・学校の指針は今後10日以内に決定し、移民局に報告しなければならない

新しい規定の問題点

アメリカの学校は9月入学で、多くの学校は8月末から授業をスタート

すでに入学の決まっている学生がまだ自国にいる場合や、コロナ蔓延により一時的に帰国している留学生も、入国が認められず授業を受けられないことになります。

 

・学校を転校するのに十分な時間がない

・希望の大学に在籍しているにも関わらず、転校を強制される

来月末から始まる授業を前に、すでにその学校にエンロールを決めている学生が、今から転校手続きを進めることが現実的に可能なのか?という問題があります。また、対面授業をする予定だった学校に転校できたとして、その学校が予期せぬクラスター感染等によりオンラインへ移行した場合は、国外退去の対象となってしまいます。

留学生が転校を進めるには、学校からi20(在学証明書)をリリースしてもらい、新たな学校へと移行手続きを取ります。移民局が大量に雇用をカットして全ての手続きがよりスローになっている今、学期開始前までに転校が完了するかは不確定です。

また、せっかく掴み取った合格が、卒業時には違う学校からの学位となってしまいます。取得した単位が全て新しい学校へ移行されれば良いですが、新たに必要となる単位を取得する必要がある場合、より多くの時間、費用がかかることになります。

 

・学業を中断して自国に帰っても、アメリカに戻り勉強を再開できる保証はない

新型コロナウイルスの収束が見えない中、次に授業に参加できる時期、アメリカへ入国できる時期すら分かりません。今後ビザが数年からそれ以上発行されない可能性もあります。

 

奨学金は学校ベースなこともあり、転校により権利を失う可能性がある

留学する上での資金を奨学金にてまかなっている学生の中には、学校ベースで奨学金を受けている場合もあり、その場合は保証されていた奨学金を受け取れない可能性があります。

 

・多額の費用を支払った上、自国から時差や環境の影響を受けながら授業を受けることに

一部の学生は、自国に戻っても適切なインターネット環境がない場合があります。

また、時差が大きい国出身の学生にとっては、アメリカ国内時間に合わせて授業を受ける必要があり、自国での生活とのバランスを取ることが難しくなると予想されます。

 

上記以外にも、考えられるデメリットはたくさんあります。

そもそも留学生ビザは、移民局に定めれらた週ごとの最低出席時間と成績により、ビザ保持者の国内滞在を許可するものでした。パンデミックにより、物理的に授業に参加できない状況が、この方針とそぐわないことが、今回の決定に繋がったと言えます。

 

この発表は、奇しくもハーバード大学が秋学期の授業を全てオンラインにする、と発表した数時間後に発表されました。ハーバード大学の一年間の授業料は、学部にもよりますがおよそ$50,000(約540万円)です。すでに授業料を支払った留学生達はどうなるのでしょうか。。

大学のうち、オンラインのみの授業にすると発表している学校は約8%、オンラインと対面を組み合わせた”ハイブリット方式”を取ると発表している学校は約23%。60%は対面式授業を再開するとしていますが、事態の急変がないとは言えません。残りの学校はキャンパスのオープンは未定としています。

 

留学生を人質に取られたような格好になってしまった多くの大学。もし留学生をキープしたければ、大学は学校再開を強行するほかありません。

学術的、金銭的に貢献してきた留学生

現時点で、米国には100万人以上が有効な学生ビザを保持していると言われています。

その数は、アメリカ全体の大学・大学院生の約5%を占めています。留学生達は、アメリカ市民より2〜3倍の授業料を払い、多くは奨学金の対象にも入りません。一説には、留学生が毎年支払う学費は400億円にも上ると言われています。

留学生は在学中の就労は認められていないため、払うだけ払って入りはないことになります。

また、ここ数ヶ月で、トランプ政権は、卒業後に留学生への就労を一時的に認めるOPT/CPTという制度も廃止する流れになっていました。それに加えて、外国人へ就労を許可するHビザも停止となったため、もしこれが現実になれば、多額の留学費用を払って学業を終えたのち、就労の機会を与えられないまま即座に帰国を余儀無くされるという、アンフェアな状態が作られそうな矢先で、今回、さらに留学生を閉め出すような方向へと政府が舵をきってしまいました。

 

さらに、特にインドや中国から多くの学生が入国することにより、より優秀な人材をアメリカ国内で確保することが出来ていました。彼らが研究費となる学費を払い、大学は研究を続けられ、また教授陣の雇用も保証されていました。彼らが卒業後、大手IT企業などに就職することで、アメリカは技術の最先端を走ってきたと言えます。

一部のアメリカ人は、留学生により、自国民の雇用や就学の機会が奪われていると主張してきましたが、数多くの競争相手から勝ち残ってきた留学生を超えるモチベーションや資金力を持つ学生を国内から得ることは、数年では難しい気がしています。

自国とアメリカの間で行き場のない学生も

アメリカから強制退去となったとして、全世界でコロナウイルスが蔓延する中、自国に入国が出来ない生徒達もいます。日本も、手段がない限りは空港で2週間過ごすことが決められていますね。国によっても状況が異なる中、この新しい規定を強行することになれば、数多くの学生達が影響を受けることになります。

 

 

この発表の数時間後には、すでに数多くの新規定阻止を求めるオンライン・ペティション(オンライン誓願書)が作られ、アメリカ市民を含む多くの人がサインをしています。

かくいう私も、この学生ビザで米国内に滞在しています。あと数日で、今後の運命が決まってしまうので、慎重に様子を見ていきたいと思います・・・。