アメリカの子育て/養子縁組情報

アメリカで養子縁組について勉強中。学んだことをシェアしていきます。また、日米合わせて10年以上教育業界に関わってきた経験を元に、海外での子育て事情や子育て番組の情報をシェアしていきます。

米国養子縁組界の著名人と奇跡の対談実現した話

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先日、アメリカで有名な"Adoptive Nation"という本を書かれた、Adam Pertman氏とウェブ会議をさせて頂く機会に恵まれました。(奇跡!!)

せっかくなので本の内容を少しと、お話しした内容や今後やって行きたいことをまとめます。

 

アメリカの養子縁組には欠かせない一冊

 養親、子どもたち、産みの両親、全ての視点を包括的に書いた本

このAdoption Nationという本は、最初の発売から約10年たった今でも、アメリカで "養子縁組について書かれた本のうち、これまでで最も重要な本" として支持されている一冊です。

私も実際に持っていますが、あまりの内容の濃さに、お勧めしてくれた本屋のお兄さんを全力でハグしたい!

全編翻訳してここでご紹介したいくらいですが、かなりの量なので厳選した一部のみご紹介します。

アダム・パートマン氏の略歴

まずは、簡単に著者のパートマン氏について。

現在は自身が設立したNational Center of Adoption and PermanencyというNPOの代表で、養子縁組に関わる全ての人たちのためのリサーチや教育、支援を行なっています。

 

元々はジャーナリストとして活動されていましたが、自身も二人の子どもの養親となった経験から様々な活動をされ、子どもの福祉に関して最も影響力のある一人として認められてきました。

 

その影響力は、社会全体だけでなく、法整備などにも及んで来ました。

過去には、Oprahなどの各有名メディアにも登場し、ピューリツァー賞にもノミネートされました。

(パートマン氏のプロフィールページ↓)

www.nationalcenteronadoptionandpermanency.net

本に書かれていること

この『Adoption Nation』という本は、主に3つの構成から成り立っています。

 

1. 声を落とさず、嘘をつかないで ... もうそれは秘密じゃない 
アメリカでの養子縁組の歴史、各州における法整備、国際養子縁組世界一の受け入れ国となるまでの流れが書かれています。

2. 微妙な問題、生涯にわたるプロセス
縁組された子供たちのアイデンティティー形成などについて、産みの両親たちのジレンマ、そして不妊治療など養親たちの背景。

3. 有望な未来と訪れる挑戦
障がいのある子どもたちの縁組、多様化する家族構成。養子縁組に関わるお金の問題。
これまで学んできたこと、これからのこと。

 

それぞれに、具体的に家族を対象に行われた研究や

実際に起こった事件、裁判などが書かれています。

 

正直「えっ、、、」と絶句するような貧困国からの縁組事情や、

大人になってから養子だったと気づいたアメリカ人たちが、裁判によりBirth Certificate(出生証明)の開示要求をしていった様子なども書かれています。

 

 特に2項の子供たちの自我形成に関わる部分と、産みの両親たち(特にスポットの当たらない父親たち)の部分、そして3項の高騰する縁組費用に関しては、

文化的背景は違えど、日本がこれから通っていく道として、とても参考になる内容でした。

 

ちょっとだけ、下に書いておきます。

  1. 子どもたちの自我形成について・・・アメリカにも、養子となった経緯や養子になったことすら伝えない習慣があった。あるアメリカ人男性は、46歳になるまで自分が養子だと知らなかった。縁組された子供たちは実の親を親として探しているわけではなく、また興味を持っているわけではない。成長や発達の過程で至極当然のことである。自分がどこから来たのか知りたい、という欲求はごく自然なもので、決して避けては通れない人生のかけらの一つである。子どもたちの権利をどのように認めていくかー真実は時に痛みを伴うからー。また本書では、幼児期からの縁組でも、虐待等を経た施設からの縁組でも、一度縁組みされると持続的な成長を見せる、など家庭環境と縁組における子どもたちへの影響に関する研究例も多数掲示されています。
  2. 産みの両親について・・・子どもを失ったことに対する産みの親としてのトラウマ、影に隠れがちな父親の存在。子どもを養子に出した産みの母親たちが、尊厳を持って扱われる社会にはまだ程遠い。孤独や後悔、”正しいこと”をするように言われるプレシャー。また、血の繋がった父親たちは、主に2つの視点から見られがちだ。一つは、妊娠に全く無関心で去っていくような男たちだということ、もう一つはそもそも縁組に関わって来ないこと。養子縁組はかなり変わって来たが、男性たちの立場は変わっていない。全員ではないが、大部分がすごく若い男か、他の女性の夫か、もしくはただの臆病者かー。社会の仕組みがそれを許していることもある。


上記のように様々な研究やストーリーを交えながら本は進んでいきますが、

ここでは本当に書ききれない〜!ので、

今後少しずつでも、参考になった研究などを抜き出し詳細をご紹介できたら、

と思っています。

著者のアダムさんとのウェブ対談

コロナの自粛期間中、私は丸々3ヶ月間家に閉じこもり、

日本で養子縁組と関わっている方や縁組された当事者の方など、いろんな方のお話を聞く機会に恵まれました。

 

(4ヶ月半経った今も未だにステイホーム中ですが・・・)

 

知れば知るほど、「いったいどこから手をつけたらいいんだ〜!!!」

と逆に何もできなくなっていく自分。。。困った。。。

 

そんな時、持っていた『Adoption Nation』の本を思い出し、

政治家でもなく、プロのソーシャルワーカーでもない、

私の理想的な”その真ん中”のポジションで、養子縁組に働きかけてきたアダムさんと話したい!

という気持ちになって、メールを直接送ったのがきっかけでした。

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きゃーーーーー!!!!ってなってます。

これから一人の大人として何ができるのか

アダムさんがまだ、ジャーナリストとして別の事件を追いかけていた時(OJシンプソンの殺人事件)、

記者ルームで「なんてことなの・・・」と呟いた女性がいました。

 

「どうしたの?」と話しかけたアダムさん。

その女性は、イリノイ州で4歳の男の子の親権が、血縁関係のある父親に渡ったことが書かれた記事をみせてくれました。

4歳まで愛情をたくさん受けて育って来た男の子が、今日から知らない家で”父親”と暮らすことになった話。

 

「僕はわかるよ、僕も養子をもらったから。」

 

そういったアダムさんの真横にいたレポーターが、

「本当に?うちも2人養子で迎えたよ」

 

そしてそのさらに隣に座っていた人も、

「うちも2人養子で来たんだよ」

 

そしてその女性記者が、

「本当に?・・・・私は養子で引き取られたのよ」

 

自分だけじゃなかった。いつの間にか、周りも、その輪の中にいたことが突然わかった。

気づかないうちに。

それならば、もっとその道のりを整備しなければ。

これからその道のりを歩き始める人たちと、すでに歩いて来た人たちの為に。

 

これはアダムさんの体験談です。

お子さんを実際に養子で迎えられた頃なので、約20年前だと思いますが、日本はまだこの段階まで来ていないのでは、と思います。

 

アダムさんが何度もおっしゃっていたのは、

「You need to be optimistic, and patient at the same time.」

(前向きでいること、そして我慢強くなくてはいけないよ。)

 

どんなに急いでも、時間はかかるし、前向きに進めていく必要がある。

今日明日、社会は変化を受け入れられないし変わらない。

まずは、小さなところからでもいい。

養子縁組は、関わる人を苦しめるためではなく、幸せのために行うもの。

"You can't boil the ocean."

最後に、アダムさんの教えてくれた素敵な言葉をお伝えします。

"You can't boil the ocean." 

直訳すると、”海を沸騰させることは出来ない。”

 

つまり、海に入っている水を沸騰なんて、あんな途方も無い量の水を沸騰なんて、

出来ないですよね?

 

でも、スプーン一杯の水なら、沸かすことができる。

20年前のアメリカの状態が今だと考えると、今から登っていく山はとてつもなく高いけれど、

そうやって一つずつ、一歩ずつ、大人たちが前に進めていくことが大切。

そして、子どもたちや関わる全ての人たちが適切なケアを受けられるようにしていくことが大切。

 

具体的に、「このような団体経営のアイデアはどうだろうか?」などの質問もさせていただきましたが、もっと勉強して、突っ込んだインタビューが出来たらよかった!!!

とも思いました。。

 

プロのジャーナリスト相手なので、自分の勉強不足が悔やまれます。

 

しかし、今後記事を書いたり様々な方法でアプローチしていくことを話せました。

 

「僕の本を翻訳したら〜」なんて冗談で言っていただきましたが、

本当にやりたいことのリストに追加させていただきました!

 

アメリカでは最近、疫病のエキスパートで、

エイズの研究にも多大な寄与をしたファウチ博士の

研究者を目指す学生たちへの神対応が話題になっていますが、

 

私も声を大にして言いたい!!

アダムさんの神対応!!

 

長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました^^