アメリカの子育て/養子縁組情報

アメリカで養子縁組について勉強中。学んだことをシェアしていきます。また、日米合わせて10年以上教育業界に関わってきた経験を元に、海外での子育て事情や子育て番組の情報をシェアしていきます。

講義①”オープン養子縁組” / APC(養親向け)講習会 2023/5

 

最近のはなし

なんだかもう毎回驚いている気もしますが、前回の投稿からまた一年以上経ってしまいました。

時の流れの速さと、大学院生活の充実度に満足する気持ちの間にいます。

 

2022年秋学期に修士論文を描き終えたため、2023年春学期は、課外活動により集中することができました。New York Birth Control Access Projectという活動の一員になり、NY州議員の人たちとの面会や法案成立に向けての活動をしたり、(避妊薬へのアクセスへのハードルを下げよう、もっとたくさんの人たちに行き渡るようにしよう、という主旨です)

 

Green Chimneysという団体でボランティアをしたり、(障害やトラウマで地元の学校に行けなくなった子供たちを、幼稚園から高校生まで受け入れている学校です。牧場の真ん中に校舎と寮があり、動物や植物との触れ合いを通じたアプローチを行なっています)

 

インターン先で色々な経験をさせてもらったり。

 

2023年前半は駆け抜けてきた感があります。

 

久しぶりの対面勉強会!

そんな中、所属する団体Adoptive Parents Committee (略:APC)の勉強会がこの日曜日に開催されました。いつもは毎年一回、11月の開催ですが、今回は対面で5月に開催。

コロナ禍以降、最初はオンラインで、次はオンラインと対面を組み合わせて、とイベントを継続してきていたAPCですが、今回は完全に対面での開催でした。

会場となったSt. John's University。NY市街からかなり離れた場所にある私立大学です。

市街地に校舎が点在する自分の大学院とは違い、広大な敷地に米国大学感を感じました。
映画で見るようなフットボール競技場などもありました。そして、さすが私立大学、設備が綺麗でお金がかかっていそう!何より教室内でサイレンなんて全然聞こえず静かでよかった。

講義① オープン・アダプション

最初に受けた講義は、”Open Adoption (オープン・アダプション)”

アダプションとは、養子縁組のこと。オープンアダプションの正確な定義は、養親と生みの親との間がお互いに名字・住所・連絡先を知っている状態だそうです(会場にいた弁護士談)。

 

日本でも最近、オープンアダプションの流れができている様ですね。

アメリカも、成立背景は違えど全く情報のない状態からオープンアダプションへと舵を切り返した歴史があります。(この辺りは、当時の米国政治や世論が大きく関わっているのでここでは割愛します。)

 

この講義の講師を務められたのは、社会福祉士として数多くの養子縁組に関わってきたエレンさんと、弁護士として、また自身も養親としてたくさんの縁組家庭に関わってきたジョニさん。

彼女たちの話していたことを下記にまとめます。

 

オープン・アダプションで大切なこと

・もしオープンアダプションが嫌なら、それはそれで良い

・縁組過程、縁組後も、全てを”法律的に”管理すること。

・例えば、生みの親と急に連絡が取れなくなって、数年後帰ってきた時に裁判所で親権を訴えられたら?誰もそんな状況には陥りたくない。そのための法律的な管理。ルールを決める。

・生みの親、養親、全員に弁護士がついていて、どの人も自分の意思に反した合意をしないことや、全員がその縁組に対して共通した認識を持っていることを確認すること。

約束事は最小限に。結果的に与えられるものが大きくなるのは良い。

無理して大きく約束して、できなかったときに関係者みんなが傷ついたり、嫌な思いをする。

 

・自分達の’ここまでなら良い’という境界線を決めること。

・最初にしっかりした基盤を決める。時間の流れと共にルールが変わることもあるし、それはそれでok!お互いに居心地が良くなれば、変わっていくこともある。

・全てを記述で残すこと。(NY州ではPACA:Post Adoption Contact Agreementとして、縁組の同意内容を全て書面で残すことになっています。一方ですぐお隣のNJ州では、PACAは義務付けられていません。)

※PACAについては講義④に記載します。

 

なんでもしっかり書面で残し、訴えることへのハードルが低いアメリカ、という感じがしますね。個人的には、感情を大きく揺さぶられる案件だからこそ、気持ちに流されて曖昧なままにせず、土台をしっかり決めるのは大事で必要なステップではないかと思います。

 

 

そして、講師の二人が強く伝えたいと言っていたのは、

「生みの親に対して、超えてはいけないラインを守ること。」

 

縁組後も関係性を続けていくとして、慎重に、かなりゆっくりしたアプローチをしてほしい、ということでした。よく養親が口にするのは、

「でも私たちは親友なの!」「まるで姉妹みたいで…」

という言葉たち。

 

でも、そうじゃない。

 

生みの親はあなたの赤ちゃんを産んでくれたんだから、愛着や親近感が生まれるのは当然。でも、彼らもまたいろんな心理状況にあって、理解が追いついていないこともある。

相手を尊重して、ゆっくりと、自然に生まれていく関係性を大切にしてほしい。

 

 

変わっていく気持ち、それぞれの事情

ここで、実際にあった縁組の一例を紹介します。

 

妊娠した彼女はNYの由緒ある家系の娘さんで、容姿端麗、成績も良く大学生でした。妊娠には32週目まで気づいていなかったそう。(気づかないなんてあり得るのか、という声も聞こえてきそうですが、本当にあることなんだそうです。)

久しぶりに娘に会った母親が膨らんだお腹に気づき、家族は大急ぎで堕胎手術ができる病院を探したそう。それでも堕胎は難しく、結果養子縁組に子どもを託すことに。

 

最初のうちは、産む本人も含め、誰も赤ちゃんとの繋がりを求めていなかった。世間に事実を知られることを恐れて、病院での保険の利用さえ拒んでいたそうです。

 

でも、縁組が成立した後、初めて生みのお母さんが赤ちゃんの写真を見たとき、彼女の中で何かが変わった。当時まだ彼女はカウンセリングを受けていて、当時も今も養子縁組を専門とするカウンセラーは少ない中、彼女はだんだんと赤ちゃんとのつながりを求めていくように。

 

生みの親側の両親、祖母は大反対で、結果的に生んだ彼女が養親との狭間に立たされる状況になってしまった。

 

それでも、徐々に全員が変わっていって、少しずつ歩み寄って行って、2年後にはみんなが納得する形で今後のお付き合いを継続していくことになったそうです。

 

プライバシーのほぼ存在しない世の中で、どのように安心できる関わり方を探すのか

以前twitterの方では発言したかもしれませんが、現在では、23andMeやancestory.comのように、簡単な唾液の摂取などから、自分の遠い親戚や知らなかったきょうだい達を見つけられるサービスが存在しています。

 

アメリカでは精子卵子の提供も行われており、自分の知らないところに血のつながった誰かがいる可能性があるのです。もちろん、養子や里子に出された子どもたちが家族と繋がる可能性もあります。

 

ソーシャルネットワークで個人情報もあらかたわかる時代に、どのくらい関わっていくのか決めることは、とても大切なことです。

 

共有するのは連絡先だけなのか、写真や手紙、プレゼントのやりとりは?面会の頻度、時間は?贈り物や連絡は直接するのか、誰か第三者(弁護士は縁組団体など)を通すのか。

また、いろいろな関わりを何歳まで続けるのか?

 

人によっては、かなり細かいところまで決める人たちもいるそう。ここで、約束事は最小限に。という前述のポイントが出てくるんですね。

無理して年に4回の面会を設定して、それが達成されなかった時、一番傷つくのは誰でしょうか?また、子どもの年齢によっては、状況がうまく飲み込めず、もう少しペースを下げた方がいいこともあるかもしれません。

 

そして、アメリカではありがちですが、例えば養親に新しいパートナーができたり、生みの親に新しいパートナーができた時。基本的には、面会にはパートナーを連れてこられません。

子どもを混乱させるだけだし、何よりも、縁組の同意は生みの親本人、子ども、養親の間での取り決め。祖父母であっても、入り込むことはできません。

もし祖父母が関わりを希望する場合は、具体的に同意書に記載が必要です。

 

そして、裁判所はいつでも、子どもにとってのベストを最優先に判決を出します。法的に結んだ同意書に変更を加えて、また新しく親権者として加わりたい場合などには、裁判所の許可も必要です。自分の生活に起きる変化(婚約、結婚、引っ越しなど)はお互いに共有した方が良い、とのことでした。

 

次回の講義は、「アジアにおける国際養子縁組の近況」についてです。

 

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